Ricca Terra / リッカ・テッラ SA / Riverland

近年オーストラリアのワインシーンを騒がしている1つのワイナリーがあります。その名は“Ricca Terra” / リッカ・テッラ。2019年頃から急速にその名が登場し始め、今やオーストラリアの目先鋭いワインショップでは彼らのワインが所狭しと並べられています。


リッカ・テッラはオーナーであり、自らをChaos Creator / カオス・クリエイターと称する栽培家Ashley Ratcliff / アシュリー・ラトクリフによって2003年に設立されたワイナリー。南オーストラリア州リヴァーランドの地に70haの自社畑を所有し、実に45種類ものブドウ品種、それもオルタナティブ品種を主に栽培しています。ロンドンに生まれ生後間もなくオーストラリアへ移住したアシュリーは、両親が所有していた牧場にブドウを植えたことから栽培に興味を持ち始め、OrlandoやYalumbaといったワイナリーで栽培に従事。そして2003年、リヴァーランドの地に自らの畑を興すべく土地を購入します。


当初はシャルドネやカベルネといったブドウ品種を植え始めたアシュリーでしたが、2004年に南イタリアへ旅行した際に出会った数々の地ブドウたちが全てを変えました。「温暖で乾燥したリヴァーランドの地にこそ、こういったブドウ品種が合うのではないか」と閃きを得たアシュリーはすぐに国際品種を引っこ抜き、ネロ・ダーヴォラやヴェルメンティーノ、フィアーノといったブドウを植え始めます。当初はオルタナティブ品種という言葉すらない時代、オーストラリアで誰も聞いたことがないような品種にも意欲的に取り組むアシュリーは中々理解を得られませんでしたが(結果自らをカオス・クリエイターと名乗るに至る)、徐々にその合理性が認められるようになります。乾燥が激しいリヴァーランドではどうしても灌漑設備に頼らざるを得ませんが、気候に合致したブドウ品種を植えることで灌漑を最小限にした上で環境負荷の少ないサステーナブル農法を実践。オーストラリアでオルタナティブ品種の可能性が見出されるようになると2015年にはGourmet Traveller Wine誌によって「Perpetual Viticulturist of the Year / 歴史に名を遺す栽培家」に選出、2019年にはJames Hallidayによる最高評価5ツ星を得るに至るのです(現在ではリヴァーランドワイン委員会の会長も務める)。


「私はあくまで栽培の専門家であり、醸造は専門外。誰も真似できないことをする栽培家としてトップレベルでありたいと思っている」と語るアシュリー。そのためリッカ・テッラのワインは全て彼が信頼するバロッサ内3ワイナリーの醸造家によって委託醸造されています。当然委託醸造といっても詳細な工程に至るまでアシュリーと相談の上に決められ、リッカ・テッラが求めるクオリティ・個性は見事に表現されています。また、リッカ・テッラの名前で出されるワインは全て手摘みによって収穫、野生酵母によって自然醗酵され添加物の使用も最小限に抑えられたもの。あくまでクリーンな酒質であることが大前提ですが、なるべく人の手による介入を無くすことで高品質なブドウが持っている魅力を損なうことなくワインへと反映させることができると言います。そうして出来上がるワインはフレッシュかつ瑞々しいほどのフルーツ感に溢れており、個性的でありながら日常に溶け込むようなカジュアルさを備えたものとなるのです。

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